The DAG-STAR  Daniel Day-Lewis  
  by Dagmar Dunlevy
  " The Boxer " is in some serious real-life pa
in.


   
 現実の痛みを伴った映画 「ボクサー」 

ダニエル・デイ=ルイスはこのインタビューの為にロスへ来ることができなかった。飛行機にさえ乗れない状態だったのだ。結局、衛生放送を通じてニューヨークの彼と話すことになったが、その間も痛みに顔をしかめ、かなり辛そうである。映画「ボクサー」の撮影中に背中を痛めたのだ。腰のあたりにぶら下げられた冷却パックがわずかながらの慰め…といったところか。10分毎に起き上がりストレッチを、とう医師の指示に従い、このインタビューの間も時間がくるとダニエルは起き上がり、ストレッチを始める。


39歳になる彼の最初の一言。
「この役をやるにしては年だったからね」

3年前にボクシングを始め、本格的なトレーニングに入ったのは撮影が始まるちょうど1年前。ダニエルはこの映画の為に自分自身を完璧なボクサーとして創り上げた。ロープを飛び越え攻撃を仕掛けていく時の、あの迫力はすごい。脊柱の椎間板を痛めても不思議はない。

ロンドンのジムではアマチュア・ボクサー達と闘い、ダニエル自身も目を痛め、鼻の骨を折った。実際のところダニエルは驚くほど上達し、アイルランド出身で、元世界チャンピオンのバリー・マクギガンはダニエルを指して、「イギリスのミドル級ボクサーの上位10人からの挑戦を受けても十分に戦える状態」と語る。

映画「ボクサー」は、ラブ・ストーリー、IRA、そしてボクシング、これら三つの要素から成っている。ダニエルが演じるダニー・フリンは将来を嘱望されたボクサーであったが、IRAに身を投じ、やがてイギリス政府によって投獄されてしまう。14年間の服役後、32歳で出所となるが、その時ダニーのIRAへの気持ちは変わっていた。しかし、愛は変わらなかった。エミリー・ワトソン演じる‘マギー’への愛である。

マギーは既に結婚しており、思春期を迎える息子がいた。また、彼女の夫もIRA活動の為に服役中の身である。 しかし、マギーも、ダニーのことを思わない日はなかったのだ。

それぞれの愛と、何が正義か、そして荒廃した北アイルランドの街に希望を見出そうとする心。これらが、映画「ボクサー」のテーマである。


Q プロテスタントとカソリックの争いは今なおベルファストで続いており、この映画が描くのも同様に北アイルランドにおける危機的状況です。時代と共に状況が変わると仮定して、例えば信念や勇気に関して、若い世代に伝えたいことは?

D
 いい質問だね。あの映画で伝わるのは悲劇的なイメージだ。でも、ぼく自身は未来に関して楽観的な方なんだ。用心深さをも少し残した、小さな楽観主義だけどね。
楽観的でなければいけないんだ。楽観的であることが理にかなっているとは言えないよ。でも、理にかなうようにって考え出すと、とにかく引き下がれ、じっとして事態を静観しろ、…ということになってしまうからね。

物事は変わっていくものだろ。撮影が始まる前のことだが、ごく短期間だけの平和調停が成立したんだ。ベルファストはその時、驚くべき変化を体験してね。街の中心地は息を吹き返し、子供たちは路上に飛び出した。その時、皆が平和の可能性と、そこで必ずや約束される自由の感覚を味わったんだ。それを誰が再び失いたいと思うかい?

今まで以上に目を光らせ、声を上げ、自分達が獲得したものを守ろうとするだろう。残念なことに事態は再び悪化している。しかし、たった一度にしろ希望の種は蒔かれたんだ。根はついたんじゃないかな。

Q 希望があるということですね?

D そう。…そうは言っても、僕が憂慮してるのは、人種間の憎しみや独善的な考え方の殆どが、ミルクと共に子供たちに与えられているという事だ。非常に幼い時期から母親からだけでなく、むしろ家族全員を通して教え込まれている。どちらにしても、生まれて間もない頃から既に始まっているんだ。

ちょうど撮影の最中だった。オレンジマン・マーチのある、一年を通じて最も危険な時期だった。小さい子供がインタビューされていたんだが、子供達は皆、つばを吐けば届くような距離に住む、バリケードのすぐ向こう側の人間達を憎しみ、恐れていたよ。つまり、歴史上の悲痛な体験を、親からまるまる引き継いでいるんだね。


Q 映画「ボクサー」では、あなたが演じるダニーとトレーナーの2人が、 ボクシングを通して子供達の心を 一つにまとめようとしています。
あなた自身とスポーツとの関わり合いはどうですか?

D 少年時代はまさにサッカーが宗教だったね。イギリスのロンドン、ケント、どこでも子供達はサッカーに熱中していたよ。すごくレベルが高くて、自分としては、まぁ、頑張ったつもりなんだが、それ以上にはなれなくて。
サッカーを愛し、やがてサッカーがあまり上手くない学校へ進学し、正気を取り戻した訳だ。(笑)

Q スポーツにおいて競争にこだわる方?

D かなりこだわる方だね。サッカーだけでなく、運動競技全般が好きで、いつも必ず何かやっている。サイクリングにもの凄く熱中したこともあったし、テニスやフェンシング、それぞれ内容は違うものの、どれも大好きだよ。ボクシングは新しい発見の連続で、できれば背中が治り次第また始めたい。自分の限界まで夢中で没頭できる何かがあるんだ。

Q 「ボクサー」では本物のパンチで相手とやりあいましたね?

D 特殊メイクで誤魔化すのは嫌だったからね。ボクシングで不利なのは、相手にやりこまれて、それでもまだ試合は続き、自分はまだ戦えると思っているのに、身体がついて来ないということだ。これは、まさに僕が身をもって体験したことだけどね。




* バリー・マグギガン Barry Mguigan 

この映画のモデルとなったアイルランド出身のボクサー。アマチュアボクサーとして'80年モスクワ五輪に参加。アイルランド・チームのキャプテンを務める。’85年世界WBA世界フェザー級チャンピオン。‘90年に引退し、プロボクサー協会の会長に。
映画「ボクサー」ではダニエルのトレーナーを務めた。また、映画のボクシング・シーンは、マグギガンのアドバイスに拠ってとても現実的なファイトシーンになった。